◎きっかけ
小さい頃から母親のカウンセラー役、家族関係の調整役をやってきて、子供の頃に子供でいられなかっ
たこと。その影響が大人になって劇作を始めた段階で自身の空洞を見つけてしまって、それを探求し掘
り進めた結果、心が穴だらけになってしまったような状態になりました。
◎当時考えていたこと
・どうして自分だけ他の人と違ってこんなに弱いのだろう。どうして周りと違って育たないのだろう。
大樹に囲まれた雑草のような気持ち。
・ルールを知らないまま人生というマラソンを走らされている。周囲の人々は途中で水を飲んだり、
自転車に乗ったり、ピクニックをしたり、家に帰ったり自由にしているように見えるけど、
自分にはルールが分からず、ただ一人で走っている。路上で倒れこんでも「大丈夫?」と声をかけて
くれる人はいるけど、一緒に寝転がって私が回復するまで待ってくれるような人は誰もいなく、3分
もすればいなくなってしまう。そんな気持ちでいました。
② そこから社会復帰に繋がり今の仕事をすることになった流れを教えてください
丸4年ひきこもりましたが、自分自身があまりにも醜くなって着る服もなくなってしまった。そんな中
で“ちょっとした思い付き”で家から6kmほど離れている里見公園まで歩こうと思いました。ごく幼少
時に行った公園であまり覚えていなかったのですが、「どんな公園だったろう?」と確かめたくなった
のです。
その日は大雨が降っていましたが、真夜中にカッパを着込んで玄関を出ていきました。結局公園にたど
り着くことが出来なかったのですが、それがきっかけでウォーキングを始めるようになりました。
まずは里見公園までたどり着くことが目標でした。徐々にウォーキングからジョギングになり、里見公
園まで行けるようになると、いつしか毎日10~20km走るようになりました。ジョギングが趣味にな
ると、大晦日に葛西臨海公園で初日の出を見るためのマラソンを計画し実行しました。往復30km超
を一人で走り切り、次の段階へ進むことが出来ました。
精神科を受診するようになると、福祉のレールに乗って、デイケアに半年、B型作業所に2年、特例子
会社(障がい者雇用)に5年通いました。特例子会社にて社会保険業務に配属され、社会保険労務士の
存在を知り、資格をとり、独立しました。
デイケア以降の8年ほどの回復期は、生きなおしの時期だったと思います。ただ、もっとも重要な時期
だったのはひきこもりだった時期であり、まさに繭の中にいる状態で、命が産まれるか否かという緊迫
した時期だったと思います。
この時期に“ちょっとした思い付き”という直観に身を委ねることが出来るようになったのは、これまで
の家族関係で培われてきた自動思考やトラウマ反応が完全に疲弊していたからだったと思います。自分
を縛ってきた様々なものが力を失った隙間を縫って、ようやく自分の本当の声が聞こえたのです。ぐる
ぐる思考の頭の中ではなく、身体からの直観に耳を傾けることが大事です。
また、福祉のレールに乗っている時間は学生時代のモラトリアム期間に近いと感じます。ただ、それで
も一番大事なのは繭の段階。産まれないまま朽ちていくかどうかは、繭の環境によって決まります。し
っかりと「ひきこもりきる」環境は必要だと感じます。
③ 夢ぷらすと繋がったきっかけと、夢ぷらすの中でされていることを教えてください
葛飾年金事務所に週2 日勤務していますが、休み時間は勤労福祉会館で休んでいます。その際に夢ぷら
すのパンフレットを見つけたのがきっかけです。すぐに手伝えることはないかと問合せをしました。そ
の後代表の別所さんとの面談があり、障害年金セミナーや障害年金代理申請、お話タイムをさせて頂い
ています。
④ これからやってみたいことはありますか?
自分の体験を活かしたひきこもりや生きづらさに関する講演会を行いたいです。また、演劇も再開した
いと思っています。
⑤ いま生きづらいと感じている皆さんへ、または一番つらかった頃の自分にメッセージをお願いします
今の状態は常に合っているということ、それがどんな状態であれ正解なんだと伝えたいです。あなたや
誰かが間違ったからそこにいるのではなく、まさに“今ここ”が正しい道なんです。この世界には変化以
外ありません。鈍感こそ現代の王者といいますが、そうでない生き方をする皆さんは自分という器が表
現する声を敏感に感じられる能力を持っています。それはこの時代にとって特別な役割を担っていると
いうことなのです。「自分のせい、他人のせい」というどちらも大事な感情を感じ切ったら、次元上昇
の時です。その道は合っています。
最後に、一番つらかった頃の自分へのメッセージを書いて終わりにします。
「もし命を落としてしまってもそれが君に必要なことだったと、少なくとも私だけはその行為を全面的
に支持するから安心してね。生きている人間の論理ではなく、死にゆく人間の論理こそ今の君に大事だ
って知ってるし、今の君の状態は大正解。それが君独自の道だよ」